満月と岩木山 [日々]
二週間程前の朝、女性誌で掲載した青森の岩木山の写真を整理しながらこの山のことを考えていた。
昼に青森在住の木村秋則さんの本を読んでいたら、青森の仕事が入る。
夕方にはその女性誌から別件の問い合わせがあった。
その時期、ある単語が頭の隅にいつもあった。
その言葉は中華街でも繋がっていた。
いろいろな偶然が重なりそのイメージの行き先に箱根が浮かんだ。
翌日に箱根での撮影依頼が舞い込む。
という訳で先週末は箱根、週明けに青森に行ってきた。
青森での集合時間より早めに東京を出る。
撮影前に澄んだ空気をたっぷり吸い込みたい。
できれば岩木山も久しぶりに見てみたい。
青森駅に着くと機材をホテルに置き、カメラ一台ぶらさげて在来線に飛び乗る。
行く先は決めていない。
できれば岩木山が見える駅で降りてみたい。
太陽が傾き、紺色の闇が津軽平野をゆっくりと包み始める頃、うっすらと淡い月が現れる。
そう言えば今夜は満月。
ひんやりとした乾いた空気に、月はいつもより白く輝く。
月を見ようと次の駅で電車を降り、ホームの階段を駆け上がる。
最上段に達したとき、すれ違う高校生に岩木山の場所を尋ねてみた。
指差された僕の後ろには、先ほどまで雲に隠れていたその山が夕陽に染まり赤く輝いていた。
東に満月、西に岩木山。
絶景。
夕暮れの道を地図もなく歩くと川に出た。
土手に沿って見晴らしのいい場所を探す。
川の流れる音がゆったり空へと流れる。
天と地が近くなった。
この景色を見たかった。
箱根に行く前に「京都に住むあの人はどうしているだろう」と考えていた。
すると何年も会ってないその人から突然にメールが届き、青森に行く前に会うことになった。
僕と京都の縁を持って来てくれた。
そしてこれから各々が進むべき道を話した。
その時話題になった人と昨日は赤坂で偶然に会う。
偶然が続くことは誰にでもあるだろう。
仕事柄さまざまなジャンルでトップを走る人達に会う。
顔にも、雰囲気にも、縁を繋げる不思議な能力を感じる。
同じ空気を吸うことに安心感を覚える。
深いところでの強い力を感じる。
写真も仕事も行きつくところは縁結び。
重なる偶然に励まされたような二週間だった。
イメージの先はまだまだ長い。
途切れたり、消えたり、諦めたり、それはまるで月夜に探す小道のようなものかもしれない。
2011-10-15 13:11