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場所   [旅  Travele]

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空を見上げることが人よりは多いのかもしれない。
あの雲にはどんな表情があるのだろうと考える。
目の露出計をオーバーにしたり、アンダーにしたり、風に乗せてみたり、太陽と遊ばせてみたり、視点を変えることにより、ひとつの雲を空いっぱいに、あるいは時間を繋げることによって様々な表情があることを知る。

これは生き方にもつながると思うようになり、自分が置かれている現象が、喜びも悲しみの瞬間も、雲と同じように例えられるようになり、広がりのなかで考えられるようになった。

数日前の大雪は我が家では20センチほど積もった。
1月中旬にクルマにぶつけられた肩のリハビリはまだ続いていて、翌朝の道路の凍結を考えるといまはその痛みを忘れて雪かきをしなければいけなかった。
翌日は凍結を心配したのが嘘のようによく晴れた。
雪を積み上げたアスファルト横の土をよく見ると、5センチほどの小さな新芽が数日前よりはるかにキラキラと輝いていた。
あらためて雪が大地を豊かにしたことを知った。
そしてその小さな青の輝きは僕の大切な被写体となった。
頑張って雪かきをし、雪のなかにいたからこそ、雪の下から芽吹いたエネルギーをより感じたのかもしれない。とても嬉しい気分になった。


友人からメールが届いた。
ハワイに関する著書が何冊もある今井栄一君。
アロハの師匠であり、ときに旅のパートナーである。
メールはここから始まる。

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きっと好きだと思うので(笑)。

敬愛する批評家、故スーザン・ソンダグの言葉です。
(訳は今井)

Move around. Go traveling.
Live abroad for a while.
Never stop traveling.
If you can't go far away,
in that case go deeply into places you can be yourself.
Even if time is disappearing, places are always there.
Places compensate for time.

移動しなさい。旅をしなさい。
異国にしばらく暮らしてみなさい。
旅することはやめてはいけません。
もし、遠くへ行くことができなくても、
そんなときは、
あなたが「自分自身に戻れる場所」「自分の心と向き合える場所」で、
深い時間を過ごせばいいのです。
たとえ遠くへ行かなくても、旅はできるのです。
時間はどんどん過ぎていきます。時間はなくなっていく。
でも、「場所」は常にそこにあります。
「(旅の)場所」は、なくなりません。


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この日、僕はベンチで雲を眺めていた。
まさに場所のことを考えながら。

自分の心と向き合える場所、深い時間を過ごす心。

見えないからこそ、見つけられるかたちもまたある。
心のなかに聖地さえ作れたら。




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