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秋   [日々]

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広島から山口と続いた旅。
ファインダーの中では台風の影響を受けた雲が芸術的な空を創り上げていた。
太陽の光がすべるように海面を照らしていく。
撮影が一段落すると待っていたかのように豪雨が襲う。
そして西へと移動する。
紙一重のタイミングでスケジュールをこなしていく。
順調に進んだ日程と今後の台風のことを考え飛行機の便を早くする。
家に戻り週も明け、ニュースで被害の大きさを知る。
数年前に取材でお世話になった地が流されている。
撮影は無事に終わったが、同じ日に同じ台風でこれほどの悲しいことが起きていたかと考えると虚しくなる。
旅の途中に運とかツキとか言っていた自分勝手さを恥じる。

撮影の最終地は壇ノ浦だった。
本州と九州のあいだにあるのは海ではなく、流れの早い川だった。
家の近くの多摩川よりもはるかに大きな力でスピードで潮が流れていく、流していく。
義経は平家との戦いでは非戦闘員の水夫を次々に矢で射った。
これまでの戦闘ではあるまじきこと。
漕ぎ手を失った船は激流に流される木の葉のようで無惨なもの。
もはや戦にはならない。
この地に行かないとその悲劇の想像はできなかった。
頼朝は魔人のような破壊の天才の存在を怖れた。
義経は敵ばかりでなく、悲しいことに結果的に自分へも矢を射ることになったのだろう。

肌に感じる風が涼しくなるほどに秋の旅を思う。
感じ方が変われば見方も変わる。
留まることより流れることを考える。
執着すれば新しい風に気づかない。
木を見れば森が見えない。
土を見れば空が見えない。
変わったのは自然ではなく自分達の暮らし。
虚しいのは…






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